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zoom RSS 小説:『光陰過ぎ去れば』

<<   作成日時 : 2009/07/05 23:08   >>

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   『光陰過ぎ去れば』

  「これ葛や!!なりませぬぞ!!」
 端午の節句に丁子姫の生けた菖蒲の立花がひっくり返され、畳も水浸しにされている。葛姫の仕業だった。先ほどまで家じゅうを走り回っていて母君の力作に蹴躓(けつまず)いたのである。家人に後始末をしてもらってからやり直せば済むことなのだが、一応母親として娘に躾をしておかなければならない。
  「せっかくうまくできて気に入っていたのに・・・」
 その一言で申し訳なさそうに俯(うつむ)いていた葛の目からポロポロと雫が落ちた。
  「ごめんなしゃ〜い・・・ごめんなしゃ〜い・・・」
丁子に恨まれていると思っているのだった。もともと元気は過ぎるけれども気立てのよい子で、人に平気で迷惑をかけられる性分ではなかった。本当に容貌も性格も何から何まで母親の生き写しなのだ。そんな彼女の性格をよくわかっている丁子は多少「言い過ぎた!」と後悔した。
  「家の中でふざけていたら怪我をすることもあろう。
   これからは気をつけるのですよ。」
 片付けてもらった畳の上で丁子は再び立花に取り組んだ。

  「あれ、葛何で泣いてんの?」
 部屋に万蔵が入ってくる。
  「私の立花をひっくり返したんで叱ったんですよ。」
  「そーか、そーか。母上も俺が初めて会ったときはおまえよりも
   酷いおいたをするめちゃくちゃな子だったぞ〜。
   ついでに立花もゴミかと思うくらい下手くそだったけど
   人一倍努力して今ではもう安土城下で右に出る者はいないからな。
   心配せずともおまえも成長の暁には天下一の姫になるであろう。
   さ、父のところへおいで〜。」
 しかし葛はヒゲ面のむくつけき天女の誘いを無視し、優しげな面輪の美しい鬼の膝にちょこんと座った。
  「俺、葛にとっていらない存在なのかな・・・」
 強面の天女はひどく落胆している様子である。
  「葛はまだ私に対して申し訳ないことをしたと思っているのですよ。
   葛、もう気にしてないから父上のところに参って差し上げなさい。」
 葛が父親のもとにトコトコトコ・・・と歩み寄ってくると、父親はにっこり笑って両手で葛のほっぺたを挟み自分の額を葛の額に擦りつけた。その様子を見て丁子は、いつかこんな日が来ることを―万蔵と結ばれて可愛い娘を育てることを―夢見ていた少女時代を、懐かしく思い出すのだった。
  


<あとがき>
自分の見た夢+とある漫才ネタがもと。子供の躾なんて育ちのいいネタやってる若手芸人は多くはあるまい!見た人の間では秀逸との評判です。ヒナちゃんとキョーちゃんもそうだけど、なんだか丁子と万蔵の夫妻もそのコンビのボケの人とツッコミの人にそれぞれ似てきた。いやもともと似てた!考えてみれば万蔵最初からいじられキャラだった。いずれにせよ私はいじられ役の男性が好みらしい。
 夢に出てきた自分の娘は赤毛の女の子でした。(髪の色は万蔵のモデルになった人と同じくらいだったかもしれない。とにかく赤毛か暗褐色の色素薄めの髪で顔が私に似ていた。)おいたをしたので叱りつけたら、心配そうな顔をしてちょこんと私の膝に座りにきた。可愛かった〜

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
夢に見た微笑ましい親子&夫婦模様。その「夢」は丁子姫の「夢」でありせおりさんの「夢」でもあり、二重構造の織り成す妙、と申しますか、意識上に上らない唯識的なものが物語から感じられました。わたくしは自身の「過去の記憶」を起こして文章化している感覚なのですが、これまでせおりさんは「未来の映像」を具現化された作品が多くていらっしゃいますよね。同じ創作でもその感覚の違いが面白いなと思います。
まゆぎく
2009/07/07 13:54
>まゆぎくさん
ありがとうございます
ご期待に答えてじゃれ合う万さんと葛ちゃんを書いてみました。(ヒントになったのはU氏と愛犬のキャバリアちゃんです。彼を見てると不思議に「もうすぐこんな人と結婚するんだろうな」という気がしてくるんです。彼本人ではないけど。U氏も面倒見のいいところが可愛い。)
自分が寝ている間に見た夢も、自分が「こうなってほしい」と考えてる夢も、つれづれなるままに書き留めてみると意外と一貫性があって驚きです。こうやって小説化してみて初めて気付くこともあります。自分の内面というのも整理してみないと結構わかってないですね。

ちょっと前に自己啓発本を読み漁った時期があって、だいたいどの本も「自分が考えてることが現実化する」といった主旨のことが書いてあります。夢を思い描いてそれに向かって努力すれば必ず叶うと。どうせなら日々楽しいことを考えようと思いました
せおり
2009/07/11 21:48

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